“エンジニアード・プロブレム(Engineered Problem)”とはどのようなものかお判りでしょうか。 1つの定義としては、“やっつけ仕事” の技術とでも言えましょうか。ジェット燃料を扱おうとす る時、それは何か他の燃料と同じようなもの、すなわちガソリンより重いとか、燃料油より軽い とか、そんなふうな考え方をし始めると、この種の「技術」が顔を出して来るのです。2、3の 計算を手早く済ませ、キャメロン(米国ニューヨークにある出版社のポンプ部門 – マクドナルド商 会注)の水力データ・ブックにある圧力低下資料あたりをちょこっと眺めて、かろうじて働くだ けのポンプを選定した挙句、それを補うため2種類にわたるサイズのパイプをくっつけてポンプ が稼働するものと、決めてかゝる人があるとします。それで、大きい径のパイプは “将来のプラン ト拡張に備えるためのもの” などと正当化するわけです。まあ、何てことでしょう。
こゝに1つの事実があります。ある石油会社の基地からある空港まで輸送トレーラーで燃料が運ばれて います。その基地のローディング・ラックは1度に2車をまかなうことができるように、島の両側にそれ ぞれ1つづつのローディング・アームが設けられ、ラックへは 12″径のパイプが来ています。1,200gpm のフィルター・セパレーターが1基ラックから 100ft(約 30m)の場所にあります。配管の凡そ 70ft は8″で、これは地下にあり、最後の方 30ft が地上に出て 12″となり島の長さだけ伸びているわけです。 燃料は普通の輸送パイプラインで基地の貯蔵タンクに受入をしてフィルター・セパレーターへ行く前に予 めクレイを通して濾過しています。ある期間中フィルター・メンブレンがフィルター・セパレーターから 出たところで No. 2でありました。(ASTM D-3830 による。)
お客はフィルター・セパレーターを通した燃料を受け取るのですが、“白バケツ” テストを各トレーラー ごとに荷降ろしに先立って必ず行っています。
ところが、最近になってバケツの中の粒子の数があまり増えてきたため、お客側は積んで来た燃料の受 入を拒否し始めました。メンブレン・テストは色の点から見た場合、全く完全な状態なのです。そこで、 システム全体をチェックしましたところ、粒子がローディング・ラックに存在することが発見されました。 フィルター・セパレーターから出たところにはなかったのです。その粒子は殆どが酸化鉄で、コーヒーか すほどの大きさのものでした。
ラックの下の 12″のパイプが開かれました。パイプ壁の上部4分の3ほどがコーヒーかす大の錆で覆 われていました。パイプの底部3分の1は湿ったドロドロしたものや、錆、それにゴミが溜っていました。 掻き出すのにシャベルを使ったほどです。
計算により、1,200gpm 流量において径 12″のパイプ内の流速は毎秒 3.4ft(約 1.02m)にすぎなかっ たことが判っています。しかし、調査の結果、静電気発生の緩和を図るために、最大流量を 550gpm に 落とすよう技術部門から指示されていたことが判明しました。この信じられないほどの低い流れでは、毎 分 1.6ft(約 0.48m)のちょろちょろとした流速になってしまったのです。これがゴミの原因だったので す。すなわち、流速があまりにも小さかったため、パイプ内が洗い流されてきれいになれなかったのです。 タンク温度が地表温度より高くなるたびに、地下部分にある燃料から水が凝出し、又夜になって温度が下 がると、今度は地上 b 部の燃料から凝出するという事態が繰り返されたのです。
水はパイプから出られません。ドレンすることもできません。その結果、錆や泥状の物質が堆積する原 因となったのです。
この経験から学び取るべき第一の教訓は、燃料自体に管理を行わせる、ということです。管内を掃除し、乾いた状態にしておくことのできる流速を設計し、そしてそれを維持しなければなりません。少なくとも、毎秒6ft(約 1.8m)は必要です。
実地の経験から得た法則で知っておくと便利なのは、ジェット燃料に含まれる水は華氏温度の数値と大体同じ ppm の数値であるということです。例えば、80°F では 80ppm の水が燃料中に溶解し得る、ということです。地下パイプ内の温度 60°F に下がったとしますと、20ppm の遊離水分が析出すると考え られます。
水は凝結するためにタンク内で集まる、つまり溶解している状態から滴出していく、ということは何人 でも知っています。それなのに、配管内でも同じことが起きる、ということを、どうも多くの人が忘れて いるような感じですね。配管内の燃料の温度はタンク内のものに比べて嵩も少なく、さらされている表面 積も大きいため、もっと変化します(そして、より早く)。
最近完成した空港の給油システムでは、ハイドラント・システムが建設されるまでの向こう3年間、1 マイルほども長い 24″径の地下パイプで最高 2,400gpm の流量を扱うことになっている、ということ を知りました。その意味するところは、毎分 1.7ft(約 0.51m)の流速ということです。これはもうパイ プなどではない、全長1マイルのコンデンサーです。サンプからの水抜きもないのです。フィルター・セ パレーターのメーターに仕事を与え続けるような設計です。これなどキングサイズの “エンジニアード・プロブレム” でありましょう。
流速(Velocity =ヴェロシティ)計算早出し法
20 秒ほどで流速を計算できれば、ちょっとした数学の専門家のような感じですが、ここに秘訣があります。(流量とは異なりますのでご注意下さい)
手順 1. パイプ・サイズを2乗する。
手順 2. 得た数で、与えられた GPM (US ガロン毎分)を除する
手順 3. 0.4 を乗ずる。
(注)もし、GPM の代りに、時間当りバー レルの場合は、手順 2 でバーレルを 使い、 手順 3 では 0.3 で除します。
[例]パイプ・サイズ: 6″
流 量: 360GPM
手順 1. 6 × 6 = 36
手順 2. 360 ÷ 36 = 10
手順 3. 10 × 0.4 = 4
流速= 4ft 毎秒(約 1.2m 毎秒)
完全な公式としては、上記の等式で パイプ内径の実際値を使います。
V = 0.408 × GPM/d² 又は
0.286 × B/d²
(ザ・ギャムグラム第4号−以上−)

